

本書は2005年4月3日から10月6日までの187日間にわたる、アパラチアントレイル踏破(thru-hiker)の長編記録である。出会うバックパッカーとの友情や数々のエピソードは、まさに人と自然の物語である。639ページという分厚い本書であるが、ページを追うごとに、あたかもトレイルを歩いているような錯覚に陥ってしまう。そして、バックパッカーは、なぜ歩くのか、という答えが見えてくる。
アパラチアントレイルとその山麓には、緑豊かな自然と、先祖が培ってきた生活文化がある。南北14州にまたがる文化、宗教、政治など、米国の建国の歴史とオーバーラップさせながら、トレイルの社会学的な考察も大変興味深い。著者のネイチャーライターとしての視角が随所に表現されていて、優れた作品になっている。アウトドアファンには、是非とも読んでいただきたい好著である。 (自然体験.comより転載)
加藤 則芳 著 平凡社 刊 定価 2,800円 + 税
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